ティール組織の読書記録として記事を書きます。 まずは第1章から。
この章ではティール組織の本懐には触れず、ティール組織に至るまでの過去の組織形態をパラダイムとして文明や人間の発達になぞらえながらそれぞれ色分けして紹介しています。 体系的にそれぞれのパラダイムを紹介する役割は本書に任せ、僕は気になった部分を引用し、コメントを残すことにする。 ほぼ自分のための備忘録になるが、関連する書籍もできる限り紐づけていくので参考にもしてほしい。
紹介では衝動型(レッド)以前と多元型(グリーン)には触れず、順応型(アンバー)と達成型(オレンジ)について自分が思うことを書き連ねる。 理由としてはレッド以前は原始的すぎるし、グリーンは過去の反駁で生まれた型であるため対して有益ではないから。 なのでアンバーとオレンジを重点的に紹介して、ティールにつなげるために特にその影の部分を強く主張する。
Management Sucks!
組織ピラミッドのトップを務めるのはそれほど充実した仕事ではない ティール組織 はじめに 新しい組織モデルの出現 より
組織ピラミッドのトップを務めるということは、ピラミッドの維持にも自分のリソースを費やさなければいけなくなるということ。 それが自分の目が届かない範囲が広がれば広がるほど、無駄になっていく。
僕は人的資源管理(Human Resource Management)を専攻しているけど、U理論など最近は内的動機も働くために大事だって言われるようになってきて、人の外側に階層を作ってそこに押し当てるみたいな方法はもう要らないんだと思う。
ピラミッドの維持に向けていたエネルギーをもっと別の方向に向けることができれば、もっと人は職場で楽しく、そして効率よく働くことができるようになるはず。 そして人は管理されないと真面目に働けないという昔の考え方はいい加減やめよう。
人間性を捨象する行為をやめる
服とはつまり、社会的な仮面なのだ 順応型組織 より
社会的な仮面により、人は自分の人間的な部分(性格や感情や欲望など)を自己から切り離し社会に受け入れられる人間になろうとする。就活であらゆる就活生が同じ服を着て、黒髪に染めるのも同じこと昔は宗教や国家レベルでも起きていた。
その反面仮面をかぶることが仕事に必要のない部分を捨象するという「選択と集中」とも取れるのもたしかだし、それでうまく行ってきたことも多い。
でもこれからは『魔法の世紀』にもあるように、計算機が人間にとって難しい部分を肩代わりするようになり人間はより人間らしいことに特化する必要がある。その中で人間的な感情や欲望の部分を捨象してしまうのはある意味リスクになってしまう。
人間の不合理さを考慮していない
目標管理がすなわち答えとなる。 達成型組織 達成型の特徴② 説明責任 より
まだ見ぬ未来を作る達成型組織にとって大事なのは、「立てた目標に到達できるかどうか」。
達成型組織は「可能性」の世界に生きている 達成型組織 達成型の特徴① イノベーション
以上にもあるように、まだ実現していない世界を作る、イノベーションを起こすという点において達成型組織はとても強力。望む結果に到達するため、ありとあらゆるプロセスが開発されていった。 目標を達成するとインセンティブがもらえるような仕組みにすることで、経営者と従業員の利害が一致する。
何ができて何ができないのかを率直に議論するのではなく、人々は達成できないのではないかとの不安にかられて、架空の数字をやりとりする。 達成型組織 達成型の特徴② 説明責任 より
しかし、先が見えない、目標を達成できなくないという不安によって人々は架空の数字をやり取りするようになる。 例えば目標を低く見積もることで達成することを容易に、そしてより高く目標を上回ることでより多くのインセンティブを得られる。
それをすると結局経営者側としても権限や責任を与えづらくなるので、統制が厳しくなってしまったり、本末転倒なことになってしまう。
他の何よりも合理性に価値が置かれる。 達成型組織の特徴③ 実力主義 より
人間をイノベーションを起こす装置として扱っている達成型パラダイムでは経済学と同じように人間は十分に合理的な生き物ということを前提としている。
合理性を重視するのはいいが、『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』にもあるように人間は合理的な生き物ではない。
人間の不合理さまで含めて合理的な組織を目指すことには賛成したい。その先は人間のもっと有機的な部分も取り入れた組織になると思う。
行き過ぎたイノベーション
基本的欲求の大半が満たされると、企業は次第にニーズを作り出そうとし、私達が本当に必要としていないもの(所有物、最新のファッション、若々しい肉体)が増えるほど幸せになれうという幻想を人々の間に膨らませようとする。 達成型の影 より
需要と供給によって市場経済が成り立っていると思っているが、それは需要と供給の2つが独立している前提でのみ成り立つ。現在は供給側が必要以上に顧客の需要を喚起している。
供給側によって需要が操作されているならば、市場経済は健全な姿にはならない。そんなふうに必要以上に成果主義によって成長を追い求めて行く状態はもはや健全とは言えない。
ティール組織 第一章を読んで
最初にも述べたとおり、第1章に書いてあるのは過去のパラダイムについての説明。 それぞれのパラダイムが文明や人間の発達段階となぞらえてきちんと整理されている。 これから新しい組織の形を考える際には、これまでどんな組織の形があって、どんな発展の歴史が会ったのか、これから先には何が必要とされるのかを体系的に理解しておくことが大事。 よくあるこれからの組織を語る薄っぺらいビジネス書よりよっぽど役に立つ本だと思う。
発達心理学や社会学、歴史にも大きく関わってくる部分なので、他にも関連する書籍を読んだら知識を随時補完していきたい。